2016年製作/125分/セルビア・イギリス・アメリカ合作 予告動画を検索
隣国と戦争中のとある国。コスタは毎日銃弾をかわしながら前線へミルクを運んでいた。彼に想いを寄せるミルク売りの娘・ミレナは戦争が終わり、コスタと結婚する未来を思い描いていた。ある日、ひとりの女性がミレナの兄の花嫁として家にやってくるのだが…。
ライター/ジョセフ
見たい映画はDVDや動画配信サービスではなく、なるべく映画館に足を運んで見るようにしています。これからも素晴らしい映画との出会いを大切にしていきたいと思います。
解説/noir編集部
「オン・ザ・ミルキー・ロード」はU-NEXTの無料期間を利用して0円で視聴することができます。
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「オン・ザ・ミルキー・ロード」はエミール・クストリッツァ監督によって、2017年の9月15日に劇場公開されています。
「パパは、出張中!」や「アンダーグラウンド」など、メガホンを取ったのは家族愛から政治批判までの幅広いテーマを取り上げている鬼才です。
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セルビア・イギリス・アメリカの3カ国の合同製作で完成に漕ぎ着けて、ユーロピクチャーズ社の配給によって世界各国で公開されました。
2016年9月開催のヴェネチア国際映画祭でワールドプレミアム上映された後に、金獅子賞にノミネートされています。
戦争によって偶然にもめぐり逢ったミルク売りと花嫁が辿っていく、数奇な道のりを追ったファンタジードラマです。
都会の音楽学校のピアノ科を卒業したコスタはミュージシャンを目指していましたが、戦争勃発によってその夢を断たれ故郷の田舎町へ帰ります。
敵の兵士によって父親が斬首される現場をコスタが目の当たりにしたのは1993年のことで、それ以来人が変わったかのように無口になっていました。
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弟は精神的なバランスを失って今でもまだ閉鎖病棟で入院中で、コスタ自身も村人たちからは変人扱いされています。
周囲の雑音を気にすることなく、近所で酪農に携わっているミレナから受け取った牛乳の配達に追われる毎日です。
やがてコスタが住んでいる村に隣国からの軍勢が迫りくる中で、ローマから避難してきたという花嫁が現れます。
ミレナの兄・ジャガとの結婚式を間近に控えてはいますが、コスタと彼女はお互いに心惹かれていくのでした。
歴史の荒波に対しても敢然と立ち向かっていく主人公・コスタの役を、クストリッツァ監督自身が演じていきます。
名前と過去を捨てたミステリアスなヒロインに扮しているのは、イタリアの女優さん・モニカ・ベルッチです。
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「恋愛マニュアル」シリーズ3部作のような親しみやすさから、「007 スペクター」でのボンドガールのような妖艶なイメージも活かしていました。
コスタへの報われることのない想いを抱き続けている、ミレナの役をスロボダ・ミチャロヴィッチが務めています。
単調極まりない田舎暮らしに物足りなさを覚えているかのような、気だるげな眼差しが何とも色っぽい女優さんです。
ミレナの兄に当たるジャガの役にキャスティングされている、ミキ・マノイロヴィッチもいい味を出していました。
クストリッツァ作品への出演は1995年の「アンダーグラウンド」以来21年ぶりとなりますが、相も変わらないくせ者ぶりを披露しています。
3つの実話からインスパイアされたストーリーの中に、古今東西の神話や伝説がふんだんに盛り込まれています。
村の検問所には「和平履行部隊」の名目を掲げて駐留している、多国籍軍の兵士たちが銃を構えていて物々しいです。
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過去の作品でも旧ユーゴ諸国の受難を告発してきたように、超大国の思惑に振り回される小国の怒りが込められていました。
イタリア人の母親とセルビア人の父親の間に生まれた花嫁の逞しさは、セルビア系の父とイスラム系の母を持つ監督自身の誇りでしょうか。
今の時代に社会の中でマイノリティーとして謂れのない差別を受けている人たちへ、励ましのメッセージを贈っていました。
ロックバンド「ノー・スモーキング・オーケストラ」でリズムギターを担当しているクストリッツァ監督らしく、今作でも音楽にこだわりがあります。
息子のストリボール・クストリッツァが手掛けたサウンドトラックも、ドラマチックな物語に花を添えました。
多種多様な動物たち次から次へとが登場して、人間の俳優顔負けの名演技を披露していきます。
オープニングを飾るのはガチョウの群れで、石畳の道路を隊列を乱すことなく行進する様子が可愛いらしかったです。
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時速300キロで遥か上空を飛び交うハヤブサには、クロアチアからやって来た射撃の名手である大尉でも仕留めることは出来ません。
ヘリコプターに真正面か、体当たりを喰らわせて、フロントガラスを粉々にしてしまう獰猛さには圧倒されるでしょう。
その一方では口笛を吹きながら木琴を弾いていたコスタの右肩にすり寄ってくる、人懐っこさも持ち合わせていました。
コスタがロバに跨がって配達をしている時に、溢れた牛乳を飲みに1匹のニシキヘビ身をくねらせてが近づいてきます。
コスタが言うには蛇は幸運の使いだそうで、古来から家の守り神とされてきた日本とも不思議な縁を感じますね。